デジタル時代には、ブランドと消費者の関係が根本的に変化してきました。
消費者とコマースは、かつてないほど強く結びつけられています。スマートフォンを使ってベッドの中から買い物をしたり、ソーシャルネットワークで販売について質問したり、製品の購入前に多数のレビューを読んだりすることができるようになりました。消費者は複数のデバイスを所有しており、卸売業者からディスカウント業者まであらゆる業者からあらゆる商品を購入できます。どんな商品でも世界中のほぼすべての人に出荷できます。
ではブランドは、プラットフォームとデバイスを自由に行き来する消費者の動きを、どうすれば把握することができるでしょうか。また、プラットフォーム間をものすごいスピードで移動する消費者、とりわけミレニアル世代や Z 世代の消費者を、把握し続けるために最適なフレームワークとはどのようなものでしょうか。
現時点では、ブランドのすべてのチャネルをリアルタイムで連携できる、コマース統合戦略が最適解だと言えるでしょう。消費者の行動様式や、従来のブランドによる消費者追跡の取り組みの弱点を確認しつつ、コマース統合戦略について説明し、ID が統合型戦略の鍵となる理由についてご紹介します。
現代の消費者は小売業者よりも進歩的である
現代の消費者がテクノロジに囲まれて生活をしていることは、小売業者にとっては悪夢であると言えるかもしれません。消費者を追跡する難しさなど、消費者自身は気にも留めていないからです。
消費者は、電子メールでサイトにサインアップしたかと思えば、その 5 ヵ月後にはパスワードを忘れたからとソーシャルログインを利用したりします。カートに物を入れておいて、結局店舗で購入することもあります。通勤中に携帯電話でサイトを見ていたかと思うと、始業後に業務用のコンピュータで商品を購入することもあります(仕事を始めたのか怪しいところですが)。
ショッピングの流れを詳細に把握するには、多数のチャネルでの膨大な量のアクションをつなぎ合わせることが必要ですが、その情報量のために、特に中小企業の場合は、Facebook の店舗内購入追跡ツールのような大規模ツールを用いたとしても、消費者が購入の意思決定をどのように行うかを理解するのは困難です。
ミレニアル世代と Z 世代:行動把握の困難な世代
ミレニアル世代だけでも 2017 年の支出は 2,000 億ドルと予想され、Z 世代も 2017 年時点で 440 億ドルの購買力を持ちますが、どちらもテクノロジを駆使する世代であるため、企業にとってはその行動を把握することが困難です。
この世代の顧客は、ブランドがすべてのデジタルチャネルで展開され、ウェブサイトから Twitter、Instagram のインフルエンサーに至るまで、コンテンツの一貫性と真正性が保証されることを期待しています。プラットフォームが e コマース用に設計されていなかったとしても、最も便利なチャネルから購入したいと考えています(Instagram がその例です)。彼らは新しいプラットフォームを採用した初めての世代であり、新しいテクノロジに最も満足している世代でもあります。今後もより多くのデバイスを購入し、より多くのアカウントを作成していくでしょう。
すべての小売業者がデジタルでの追跡の問題点を克服し、すべての消費者により良いサービスを提供することが重要ですが、Z 世代とミレニアル世代の消費者を獲得しつなぎ止めることはとりわけ大切です。
オムニチャネル戦略からコマース統合戦略への移行
これまでに多くの企業が行ってきたのは、さまざまなチャネルをつなぎ合わせ、いわゆる「オムニチャネル」戦略を構築することでした。既存のインフラストラクチャを使用して、顧客がやり取りするさまざまな方法から情報を収集し、それらを遡るようにしてつなぎ合わせていきます。
しかし、オムニチャネル戦略にはいくつかの落とし穴があります。オムニチャネル戦略は、柔軟性に優れたリアルタイムなソリューションではありません。チャネル間で情報を比較して、より大規模な傾向を簡単に把握できるようなソリューションではなかったのです。これまで、ブランドがチャネル間で統一されたエクスペリエンスを提供できるよう支援する取り組みが行われてきましたが、その調整に必要な労力にはキリがありません。
コマースの統合により、このようないくつかの問題を回避しつつ、顧客が求める高度で一貫性のあるブランドエクスペリエンスを実現することができます。すべてのチャネルを 1 つの統合システムに連携することで、オムニチャネルにはない一元化された情報源を提供します。
このような単一のシステムにより、データの一貫性向上を実現し、全社員がクロスチャネルの指標をリアルタイムで利用できるようになり、顧客情報の集約プロセスを簡素化することができます。顧客の側からは、企業によるこのような取り組みがどのような違いをもたらすのかは理解できないかもしれませんが、顧客データの閲覧や顧客とのやり取り、チャネル間での購入の追跡といった内部プロセスを大幅に円滑化することができます。
多くのテクノロジやプラットフォームが登場するにつれて、この重要性はますます高まることになるでしょう。企業は、ミレニアル世代や Z 世代の行動を理解し、それらの世代が利用しているオンラインの場所で販売するため、顧客への販売や関係構や販売のための新しい方法を導入する必要が生じるでしょう。
コマースの統合における ID の役割
ID 管理は、コマース統合戦略の導入にあたり重要な要素となります。Auth0 のような高度な ID 管理システムは、すべてのデジタルストリームを集約するうえで中心的な役割を果たします。これは、次のような理由からです。
消費者の情報をリアルタイムで一元化して表示する。IAM システムは顧客情報を独自のプロファイルに保存できるため、さまざまなデバイスやチャネル間のアクティビティを 1 ヵ所に統合できます。顧客の好みからログイン履歴、プロファイルを強化できるその他の多くの詳細情報まで、顧客とどのような手段でやりとりしていても、情報を一元的に集約することが可能です。
顧客を効率的に獲得できる。ほとんど手間のかからないソーシャルログインを実現し、後日活用できるようソーシャルに関する情報を保存する高度な ID 管理により、顧客満足度を維持することができます。また、段階的に顧客プロファイリングを行うことで、データ収集を効率化できます。サインアップ時に情報のリクエストを大量に送信するのではなく、時間の経過とともに顧客から情報を収集するのです。もちろん、IAM では常に最新のログイン方法を利用可能です。顧客がマジックリンクや生体認証、あるいは今後登場する新たなログイン方法の利用を希望する場合にも、そのような効率的で安全かつ最先端のデジタルエクスペリエンスを期待する顧客を失う恐れはありません。
特にデジタルプラットフォームで顧客との関係性を強化する。すべての顧客データを 1 ヵ所で収集して追跡することで、カスタマーエクスペリエンスの形成に関与しているすべての人が、顧客に対するより豊かでより深い洞察を得ることができます。これにより、顧客がリワードセンターにログインする場合でも、あるいは実店舗に入店する場合でも、顧客ごとに個別化した対応を行うことができます。注文履歴に基づく無料サンプルのおすすめといったちょっとした対応も、個別化を通じて顧客エンゲージメントを深めるのに役立ちます。
特に、顧客情報を簡単に統合する方法を探している企業にとっては、ID 管理から着手することは合理的です。Auth0 のような強力な ID 管理支援プラットフォームを活用すれば、顧客情報統合の取り組みの規模を迅速に拡大し、コマース統合戦略の効果をさらに引き出すことができます。
Auth0 活用による小売業の未来
デジタル化が進むにつれ、相互接続するデバイスの数が増え、購入方法もかつてなく多様化する今、顧客の追跡というパズルのピースの 1 つとして、ID の重要性が増しています。顧客とのより良い関係の構築、顧客エンゲージメントの指標の改善、顧客の購入に至るプロセスの把握といった目的において、コマース統合戦略の中核に ID 活用を据えることは、戦略上優れた対応だと言えるでしょう。
ID により得られる利点をすべて活用するには、Auth0 のように堅牢性と柔軟性に優れた ID のためのプラットフォームが必要です。御社のニーズに合わせてバックエンドシステムをカスタマイズできる柔軟性と、あらゆるプラットフォームでのサポートを実現する堅牢性を備えた Auth0 なら、未来の小売業を展開する準備が既に整っています。