サイト管理者は、新規ユーザーがサイトにアクセスした際の不便を減らすため、あらゆる手段を講じたくなるものです。ユーザーが適切な決定を下すのに必要な情報をすべて網羅し、簡潔明瞭な価格プランを用意することで真の価値を示します。
そしてユーザーがサインアップへ進むと、入力欄が 10 個ある登録フォームを突きつけ、考えうるすべての質問をするのです。氏名、電子メールアドレス、パスワード、会社名、電話番号、お気に入りの本、子供時代のペット、希望、心配事など…。項目がずらりと並びます。これでは新しい潜在ユーザーは去ってしまいます。わざわざ時間を費やしてこのような長いフォームに記入してはくれません。
企業にとっては、これらのフォームは有意義なものであり、顧客をより深く理解し、最終的に顧客サービス向上につなげるために必要な情報源です。一方、潜在顧客にとっては、こうしたフォームは個人情報を収集される面倒なものに過ぎず、どんなフォームであれ、入力に 5 秒以上かかるものは敬遠されるでしょう。
しかし、双方に有益となりうる方法があります。それがプログレッシブプロファイリングです。プログレッシブプロファイリングとは、顧客がサイトの製品を利用するたびに、顧客のプロファイルを徐々に作成していく手法です。質問表やフォームを短く的を射たものにできますが、時間をかけて各顧客の貴重な情報を蓄積していけます。
最も重要なのは、ユーザーは質問攻めに遭う前に、すぐに製品に触れて体験できるということです。最初は少量の情報しか得られないかもしれませんが、ユーザーがアプリケーションを起動して利用しはじめると、より多くの情報を提供することに協力的になります。
長いフォームの問題点
顧客は、時間のかかるサインアップフォームを見た途端にやる気を失ってしまいます。ユーザーの 86% は、フォームが長すぎると登録をやめると回答しており、入力項目を 11 個から 4 個に減らすと、コンバージョン率が 120% 向上することがわかっています。
"ユーザーの 86% は、フォームが長すぎると登録をやめると回答しています。"
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長いフォームに記入してもらえない理由は主に 4 つあります。
- 価値の欠如:そのサービスが顧客にとって不可欠でない限り、長いフォームへの記入は労多くして功少なしとみなされるでしょう。とりあえず試用してみたいだけ、または登録ユーザーのみが利用できる情報を探したいだけという場合、サインアップがスムーズでないと登録をやめてしまう可能性が高くなります。
- 不相応な情報:顧客は、長い登録フォームを提示された瞬間、「これらすべての情報が本当に必要なのだろうか」と考えます。サイト制作側は、会社名、役職、従業員数の情報がなぜ営業チームやマーケティングチームにとって有用なのかを理解していますが、顧客側は、サービスを利用するためには不要な情報だと受け止めます。
- 情報セキュリティ:情報の取得量が増えるにつれ、流出の危険も大きくなります。大量の情報漏えいの発生が問題になる中、顧客はサービスの利用に無関係と思えるデータを引き渡すことに警戒心を抱いています。
- 信頼性の低いデータ:上記 3 つの問題がすべて絡み合うと、顧客は登録プロセスをとにかく手早く終わらせようとして、でたらめな情報を入力欄に打ち込むことにもなります。こうした情報は、営業チームやマーケティングチームにとって使い物になりません。
プログレッシブプロファイリングのしくみ
プログレッシブプロファイリングでは、顧客がサービスを利用する間に時間をかけて徐々に情報を収集することで、これらの問題を回避できます。
たとえば、次の情報を取得したいものとします。
* 名
* 姓
* 電子メールアドレス
* 会社名
* 役職
* 従業員数
* 電話番号
この情報すべてを、7 項目ある登録フォームを使用して一度に質問することはできます。別の方法として、3 つの情報ブロックに分割して、特定の利用場面でそれぞれを提示することもできます。
サインアップ時には、Email
、氏名(First Name
、Last Name
)、Password
を尋ねます。顧客は、サインアップには当然これらの情報が必要と認識していて、入力するのに慣れています。しかも、これらの情報は頻繁に使用されるので、ブラウザで自動入力され、負担はさらに軽減されます。
顧客をスムーズにオンボーディングに導くことで、本題である製品の真価を提示する段階に入れます。何度もサイトに戻ってきた顧客には、さらに詳しい情報を求めることができます。
たとえば、会社情報を尋ねることができます(Company
、Title
、Number of Employees
)。この段階までくると、顧客は製品の価値を理解しはじめ、頻繁に使用するようになり、さらなる情報提供にも快く応じるようになります。
最終的に、さらにもう数回ログインがあった後には、連絡を取とれるように電話番号を尋ねることができます。
わずか数回の対話で、長い登録フォームを使った場合とまったく同じ情報を取得できます。面倒な長いフォームで潜在顧客の興味を失わせる代わりに、毎回適切な情報だけを要求して、情報の必要性を明確にし、各ステップを簡略化したのです。
これには、Robert Cialdini 博士による「コミットメントと一貫性」の原則が関係しています。人間は生来、一貫性を保とうと努めるものです。ひとたび何かにコミットメント(関与)すると、どれほど些細なことでも、関わり続けようとする気持ちが強く働くのだと言います。
まずは短いフォームで少し協力してもらえば、その後に顧客がより多くの情報を提供してくれる可能性がずっと高くなります。プログレッシブプロファイリングを行うことで、ユーザーはすぐに製品を体験でき、その真価を理解して深く関わるようになります。初めは少ないデータしか得られませんが、まずはユーザーとの関係を構築し、その後さらに必要な情報を徐々に収集することができます。
Auth0 を使えば、プログレッシブプロファイリングを簡単に実装できます。ユーザーが Auth0 で認証されると、そのユーザー は Profile
レコードを取得します。このレコードには、ユーザーに関するプロファイル情報を格納できます。
ユーザープロファイルの内容は、次の 3 つのソースから取得できます。
- Facebook、LinkedIn、Twitter など、大手企業に登録済のアカウントを利用した認証プロバイダが提供する属性。
- Auth0 のルールを使用して動的に作成される属性。たとえば、電子メールアドレスだけを使用して FullContact からプロファイル情報を取得するにはこのルールを使用できます。
- ユーザー自身が追加したデータ。認証時に表示されるフォーム項目から、Profile レコードに追加できます。
認証プロセス時にソーシャル/エンタープライズログインと Auth0 のルールを両方使用した場合、ユーザーからさらに情報を追加してもらう必要はほとんどありません。
このため、既知の情報を尋ねるべきではありません。LinkedIn や Facebook から詳細な統計情報をすでに持っている場合は、この情報に関する質問を登録プロセスに追加する必要はありません。
Auth0 を使用してプログレッシブプロファイリングを実装する
これらのソーシャルプロバイダからの情報は、ユーザーがログインフォームに追加する情報と比較して高品質である可能性が高いため、これらのソースからプロファイルを事前に取得することが優先されます。ただし、このデータがない場合や、データを補強したい場合は、プログレッシブプロファイリング機構を使用して必要な補足データ、つまり顧客との交流のためのデータや、マーケティングや営業における見込み顧客のためのデータを追加できます。
ルールを使用すると、1 人のユーザーに対して発生したサインインイベントの数を簡単に追跡できます。
Auth0 Users API を使用すると、Auth0 によりユーザーメタデータ格納用に次のような「バケット」が提供されます( user_metadata
)。認証後に取得されるユーザートークンは、user_metadata
の内容を変更するのに十分です。この機能を使用すると、いつどんな情報を取得するかを簡単に制御できます。次に、Users API を使用して、取得した各種情報でユーザープロファイルを強化できます。
上記の例では、サインアップ時に last_name
と first_name
を収集し、その後のやり取りで title
と company
を取得して、最後に、ユーザーが関心を持ちそうな記事のコンテキストで subscribed
属性を取得します。
この機能の動作を確認するには、プログレッシブプロファイリングのデモをお試しください。最初のログイン/サインアップ時のロック画面は、一般的なものと変わりません。
この時点で、新規ユーザーは SSO(シングルサインオン)または電子メールを使用してサインアップできます。SSO を選択した場合、プロファイル情報はソーシャル認証プロバイダから事前に入力されます。一方、新規アカウント作成を選択した場合は、新しいプロファイルが作成され、入力された情報から user_metadata
が生成されます。
どちらの方法でも、最初の訪問時にこれ以上の情報を求められることはありません。ただし、ログアウトして再度ログインすると、プロファイルに関する追加の質問が表示されます。
回答を完了すると、この情報が user_metadata
に追加 されます。
カウンタである last_profiling_step
が user_metadata
内でカウント開始され、アプリケーションを終了して 2 回目の訪問をすると、別のプロファイリングの質問が表示されます。
このデータは user_metadata
に追加保存され、営業チームやマーケティングチームに使用されます。
その次にユーザーがログインしたときには、それ以上の質問は表示されず、アプリケーションに直接移動します。
1 つの長いフォームでは、新規ユーザーは離脱してサインアップしないか、嘘の情報を入力してすばやくやり過ごしてしまいます。その代わりに、3 つの短いフォームを使用します。この手法では、ユーザーがアプリケーションに復帰した後で重要な情報を取得するため、ユーザーは製品に明らかな関心を持っており、正しい属性情報を提供する可能性が高くなります。
プログレッシブプロファイリングで情報取得を最大化する
プログレッシブプロファイリングの優れた長所の 1 つは、登録プロセスを動的にできることです。ユーザーが登録する際、管理者はバイヤーペルソナを作成し、登録プロセスをカスタマイズできます。
例えば、メタデータを Rules と組み合わせて使用すると、ユーザーが個人用メールアドレス(Gmail、Hotmail、Yahoo など)を使っているのか、仕事用メールの独自ドメインを使っているのかを確認できます。
顧客が会社の住所を使用している場合は、電話番号などの連絡先詳細を要求する前に、会社の情報を要求する方がより理にかなっています。個人用のメールアドレスを使用している場合は、先に多くの連絡先情報を収集する方が賢明です。
このように、以前の質問にどのように回答したかに応じて、ユーザーをセグメント化できます。
- 役職を質問した場合、エンジニアと回答した人とマーケッターと回答した人ではフローを変えたいはずです。
- 会社の規模を質問した場合は、従業員数が 5 人の会社か 1,000 人の会社かにより、異なるプロファイルの質問が必要です。
- 製品に関する詳細情報をいつ送ってほしいか質問した場合は、回答が今すぐほしいかいらないかにより異なる処理が必要になります。
プログレッシブプロファイリングを行えば、しつこい質問攻めのフォームでユーザーに敬遠されることなく、高品質な情報を大量に取得できます。 また、ユーザーから適切な情報を適切なタイミングで収集できます。各人の正確なプロファイルを作成することで、ユーザーにより良いサービスを提供できるだけでなく、あなたのチームが会社の成長につながる潜在的な見込み顧客を生み出せるのです。
"プログレッシブプロファイリングは、ユーザーから適切な情報を適切なタイミングで収集できます。"
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